和歌と俳句

薔薇

己れ刺あることを知りて花さうび 虚子

薔薇を剪り刺をののしる誕生日 三鬼

薔薇を瞥し婦人記者薔薇のことは言はず 草城

紅薔薇の咲き切つてをり客長座 草城

薔薇の辺にわが病むやまひ軽からぬ 草城

寝がへりて薔薇と別るるさびしけれ 草城

薔薇既にわがひげおもて見馴れけむ 草城

夢に入りてたわやめとなる薔薇の花 草城

わがいのちわれに戻りて薔薇果てぬ 草城

とほるときこどものをりて薔薇の門 林火

薔薇の花さわがしきわが影が過ぐ 楸邨

誓子生きるも薔薇のひらくも詩の力 不死男

純白のばらに咲かれて日々無為に 鷹女

ばら剪つて青年ギリシヤ語をつぶやく 鷹女

薔薇に風琴柱にふれしままにあり 節子

たらたらと地に落ちにじむ紅さうび 虚子

咲き切りし薔薇を眺めて倦怠す 草城

花散りしばらの青垣雨ひねもす 草城

乙女獲し如きかも薔薇を挿して臥す 波郷

薔薇の葉のひたすら暗し一つの花 静塔

ジープより赤き薔薇落つ跳ねとびぬ 静塔

花びらを巻いて薔薇の尖るかな たかし

白薔薇の花の尖りの弛みたる たかし

石卓の肌理滑らかに紅薔薇 たかし

薔薇を去りうしろどこかがうらがなし 楸邨

日の出の薔薇呟き癖も癒えて止む 楸邨