和歌と俳句

日野草城

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夕立のあとの虚しさ灯影の樹

遠ラヂオ晩夏の曲に憶えあり

蝉の声ひとすぢ起る朝まだき

夏深し熱きを啜る豆腐殻汁

夏の露病みびとわれの手の白き

草木の涼しき露に身を寄する

浅漬のに青白噛むひびき

暑き夜のわが呻き声わが聴ける

名を知らぬ晩夏の花たてまつる

朝の蚊を逐ひつつ病めり父の日も

はからずも麗貌を眼に 喰む

君の酔夕焼うつるかと思ふ

白麻にちちひつそりと少女かな

をみならやおのもおのもの乳の形

晩涼のまなざしのふと不貞なる

薔薇の辺にわが病むやまひ軽からぬ

寝がへりて薔薇と別るるさびしけれ

薔薇既にわがひげおもて見馴れけむ

夢に入りてたわやめとなる薔薇の花

わがいのちわれに戻りて薔薇果てぬ