夕立のあとの虚しさ灯影の樹
遠ラヂオ晩夏の曲に憶えあり
蝉の声ひとすぢ起る朝まだき
夏深し熱きを啜る豆腐殻汁
夏の露病みびとわれの手の白き
草木の涼しき露に身を寄する
浅漬の瓜に青白噛むひびき
暑き夜のわが呻き声わが聴ける
名を知らぬ晩夏の花たてまつる
朝の蚊を逐ひつつ病めり父の日も
はからずも麗貌を眼に 苺喰む
君の酔夕焼うつるかと思ふ
白麻にちちひつそりと少女かな
をみならやおのもおのもの乳の形
晩涼のまなざしのふと不貞なる
薔薇の辺にわが病むやまひ軽からぬ
寝がへりて薔薇と別るるさびしけれ
薔薇既にわがひげおもて見馴れけむ
夢に入りてたわやめとなる薔薇の花
わがいのちわれに戻りて薔薇果てぬ