新樹撓めて神のあらあらしき息吹
戦盲に腰を揉まるる夜の薄暑
新緑や薔薇の花びら地に敷きて
咲き闌けしけはひに散るや花あふち
妻かがむ樗の花のこぼれしに
夕歩きアカシヤの木に花残る
白桃は熟るるばかりや古娘
息を呑み蠅のいのちをわがねらふ
古妻のぐつすり睡たる足の裏
蠅を打ち蟻をつぶして碌々と
夏ひばり微熱の午後の照り曇り
咲き切りし薔薇を眺めて倦怠す
花散りしばらの青垣雨ひねもす
薄暑なり甘ゆるハワイアンギター
熟れ尽し麦は痩せけりわれのごと
これ以上痩せられぬ菖蒲湯に沈む
七月や髪うすうすとわが顱頂
七月や既にたのしき草の丈
めつむれば劫暑の天の大牡丹
蛍火の青きにおびえそめむとす
夏すがた妻が露はす腕に触る
妻の蚊帳しづかに垂れて次の間に
夏草や数へがたきは未知の友
八朔の鏡に骨をうつしけり
夏の闇高熱のわれ発光す
肋骨を愛すつれづれなる手以て
手鏡にあふれんばかり夏のひげ
健康な妻を心の妻として