和歌と俳句

薔薇

血のバラや数分前に懺悔すみ 静塔

薔薇紅し水もコップも透明に 草城

迷彩をいまに剥がさず地上の薔薇 静塔

部屋部屋に足りて貰ひしばらを挿す 爽雨

露の薔薇頭上の道を人が踏む 三鬼

いさかひて仲なほりして薔薇の花 草城

蔓ばらの垣が隔つる園の薔薇 たかし

咲き切つて薔薇の容を超えけるも 草田男

何も問はねど横顔の薔薇薫りくる 草田男

かりそめに人入らしめず薔薇の門 虚子

風きよし薔薇咲くとよりほぐれそめ 万太郎

星わかし薔薇のつぼみの一つづつ 万太郎

薄暮、微雨、而して薔薇しろきかな 万太郎

バラ展のばらにうもれしいとまかな 万太郎

薔薇に付け還暦の鼻うごめかす 三鬼

夕かげのにはかに冷ゆる黄薔薇かな 万太郎

華麗なるたいくつ時間ばらの園 多佳子

バラ散るや己がくづれし音の中 汀女

薔薇あふる垣夢見しが今年ほぼ 悌二郎

花溢る薔薇垣の栄え二三週 悌二郎

夜の客の気づかぬ薔薇に灯を照らす 悌二郎

ばら剪りてざぶりと桶に浸けておく 立子

薔薇に立つ過ちは誰が過ちぞ 楸邨

遠雷や内へ内へと薔薇の色 楸邨

歯に咬んで薔薇のはなびらうまからず 楸邨

薔薇はなれ一二歩にして悪の相 楸邨

黒薔薇の中の黒撰る多佳子の忌 静塔

競馬場倫敦風に薔薇咲かせ 静塔