和歌と俳句

皆吉爽雨

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14

夏めきて遊覧バスはまづ皇居

部屋部屋に足りて貰ひしばらを挿す

莟むひろ葉のかくすやすらぎに

平らかにほとりのひろ葉莟む

えごの花こぼるるいつも眼をそれて

島々の麦秋終る火よ煙よ

耶馬はまだ古簗ばかり閑古鳥

河鹿鳴く中に瀬音はゆくばかり

あやめ見て沼めぐらんに道水漬

敷むしろしてよき下ろさるる

雪解富士安倍川たぎつ辺にし見ゆ

僧房への鉾せめぎよす

かがまりしかんばせおほひ牡丹咲く

雹破れしてぞ傘立つ庭牡丹

牡丹の散りてちり添ふ蕋かなし

牡丹よしただ葉だたみの一株も

あるじ手をやりて牡丹雨を吐く

ちりかかる芥子に諸の葉ほとばしり

一瓣の残りそびえて芥子暮るる

花々の前に雨ふるかな

花の上に蕾積むなるかな

子金魚のふとるを梅雨のたのみとす

梅雨寒の火鉢たまへば旅眠く

うかがへば實梅つぎつぎ葉を出づる

出水みる登校もならぬ子と出でて