蓮見えてその香また来て木の間より
水走る散華つと見え蓮嵐
草々の茂る仔細を見て飽かず
上つ毛の桑海の中簗かかる
ならび出る渡舟瓜舟利根涼し
つむる眼の即ちくぼむ暑気にあり
キャンプ寝て月の西瓜の戸にころげ
醸したる老にもまみえ梅酒飲む
うすものの立ちて総身透かんとす
まくなぎを払ひて景を失はじ
帰るべき西日の道の門より伸び
汗引いて見あぐる橡の葉の五百重
葛の葉となりつつ解かれ落し文
葛しげる湖の泳ぎ場とくさびれ
寝がへりて山遠のきし午睡かな
蝉瀬音いま一すじに昼寝とる
遠雷に代れる発破ひるね覚
ふかぶかと藪に眼をやり昼寝さめ
臥して見る足の遠しも夏を痩せ
蚊帳裾をくぐらす薬暑気中り
腕なでて蚊のあと一つ夜の秋
赴任急暑さいとへといふばかり
みささぎの炎天の野のはや尾花
晩涼の湖の入江は町ふかく