和歌と俳句

蓮の花

ふきかへす簾の下やはすの花 子規

此上にすわり給へとはすの花 子規

桃色は辨天様のはちすかな 子規

尼寺に真白ばかりの蓮哉 子規

白過ぎてあはれ少し蓮の花 子規

行水をすてる小池や蓮の花 子規

蓮の花さくや淋しき停車場 子規

昼中の堂静かなり蓮の花 子規

大紅蓮大白蓮の夜明かな 虚子

弁天の石橋低し蓮の花 子規

夜の闇にひろがる蓮の匂ひ哉 子規

御死にたか今少ししたら蓮の花 漱石

紅白の蓮擂鉢に開きけり 漱石

徘徊す蓮あるをもて朝な夕な 漱石

暁や白蓮を剪る数奇心 漱石

晶子
漕ぎかへる夕船おそき僧の君紅蓮や多きしら蓮や多き

晶子
こころみにわかき唇ふれて見れば冷かなるよしら蓮の露

晶子
たけの髪 をとめ二人に 月うすき 今宵しら蓮 色まどはずや

晶子
棹とりの矢がすり見たる舟ゆゑに浪も立てかししら蓮の池

晶子
蓮きると 三寸とほき 花ゆゑに みぎはの人の さそはれし舟

晶子
舟にのれば 瓔珞ゆらぐ 蓮のかぜ 棹のひとりは 袞龍の袖

晶子
しら蓮や 唐木くみたる 庭舟に 沈たきすてて 伯父の影なき

晶子
水を出でて白蓮さきぬ曙のうすら赤地の世界の中に

白蓮に仏眠れり磐落ちて 漱石

そり橋の下より見ゆる蓮哉 漱石

晶子
尼寺は女の衣の色ならぬ黄蓮さきぬ秋ちかき日に

白秋
ぬばたまの銀杏がへしの君がたぼ美し黒し蓮の花さく