炎天の色やあく迄深緑 子規
炎天や蟻這ひ上る人の足 子規
炎天や行路病者に蠅群るる 龍之介
炎天や逆上の人もの云はぬ 龍之介
炎天にはたと打つたる根つ木かな 龍之介
炎天や切れても動く蜥蜴の尾 龍之介
炎天に上りて消えぬ箕の埃 龍之介
炎天の空美しや高野山 虚子
炎天や天火取りたる陰陽師 鬼城
炎天をいただいて乞ひ歩く 山頭火
炎天の底の蟻等ばかりの世となり 放哉
蛇が殺されて居る炎天をまたいで通る 放哉
炎天の涛に照られて月消ゆる 月二郎
炎天や白扇ひらき縁に人 石鼎
炎天に梅干食うて尼が唇 石鼎
炎天や枳殻をわたる烏蝶 石鼎
炎天や彷彿として伊良子崎 石鼎
炎天の火の山こゆる道あはれ 秋櫻子
炎天や死ねば離るる影法師 麦南
炎天や雀降りくる貌昏く 多佳子
炎天に松の香はげし斧うつたび 多佳子
炎天の梯子昏きにかつぎ入る< 多佳子
炎天や笑ひしこゑのすぐになし 多佳子
英霊となり炎天をかへり来給へり 鷹女
炎天に眼をさらし哭かじとす 鷹女
炎天に愛しみあへり鶴と女 鷹女
炎天を泣きぬれてゆく蟻のあり 鷹女
杉の秀に炎天澄めり円覚寺 茅舎
炎天を歩けばそぞろ母に似る 汀女
炎天や早焦土とも思はなく 汀女
炎天やけがれてよりの影が濃し 三鬼
炎天の坂や怒を力とし 三鬼
炎天の城や四壁の窓深し 草田男
炎天の城や雀の嘴光る 草田男
炎天の号外細部読み難き 草田男
炎天や鏡の如く土に影 草田男
炎天に妻言へり女老い易きを 草田男
戦車の後炎天のマラソンひそと 草田男
炎天や金潤ひて銀乾く 草田男
炎天悲報同じく瞳黒き戦禍の民 草田男
炎天をすすみがたなの昼の月 草田男
炎天に名所写真師半平和 草田男
炎天の焚火の焔めくれつつ 誓子
炎天の遠き帆やわがこころの帆 誓子
炎天に芥焼く火ぞすさまじき 草城
喜劇見て炎天のもの皆歪む 林火
炎天に怒りおさへてまた老うも 林火
炎天へまひるの炎つつつつと 楸邨
炎天に犬尻ふりて欠伸せり 楸邨
炎天に古鏡かくれて光りけり 静塔
炎天や友亡きのちも憂苦満つ 波郷
炎天に行遭ひし友と死近き妻が棺の確保打合はす 吉野秀雄