和歌と俳句

炎天

炎天の色やあく迄深緑 子規

炎天や蟻這ひ上る人の足 子規

炎天や天火取りたる陰陽師 鬼城

炎天を怖れず見るや巨樹の下 石鼎

千樫
炎天のひかり明るき街路樹を馬かじり居り人はあらなく

炎天や行路病者に蠅群るる 龍之介

炎天や逆上の人もの云はぬ 龍之介

炎天の街のまんなか鉛煮ゆ 山頭火

炎天にはたと打つたる根つ木かな 龍之介

炎天や切れても動く蜥蜴の尾 龍之介

炎天せまるわれとわが影を踏み 山頭火

炎天の学校の銀杏いよよ青く 山頭火

炎天や水に磧に橋の影 喜舟

千樫
炎天にあゆみ帰れりやすらかなる妻子の顔を見ればかなしも

炎天や白扇ひらき縁に人 石鼎

炎天に上りて消えぬ箕の埃 龍之介

炎天の石光る我が眼一ぱいに 亞浪

炎天に梅干食うて尼が唇 石鼎

蓮の風立ちて炎天醒めて来し 花蓑

炎天や土をかむつて小草の芽 石鼎

炎天やけづりかけある庭の苔 石鼎

炎天や柘榴細枝に葉と花と 石鼎

炎天や枳殻をわたる烏蝶 石鼎

炎天の底の蟻等ばかりの世となり 放哉

蛇が殺されて居る炎天をまたいで通る 放哉

炎天をいただいて乞ひ歩く 山頭火

炎天や彷彿として伊良子崎 石鼎