炎天や蟻這ひ上る人の足
ほろほろと朝雨こぼす土用哉
更衣少し寒うて気あひよき
行列の葵の橋にかかりけり
くらべ馬おくれし一騎あはれなり
風呂の隅に菖蒲かたよせる女哉
あはれさは粽に露もなかりけり
幟暮れて五日の月の静かなり
朝嵐隣の幟立てにけり
山里に雲吹きはらふ幟かな
人の妻の菖蒲葺くとて楷子哉
蚊帳釣りて書読む人のともし哉
暁や白帆過ぎ行く蚊帳の外
火串消えて鹿の嗅ぎよるあした哉
贈るべき 扇も持たずうき別れ
夏羽織われをはなれて飛ばんとす
ふるさとや親すこやかに 鮓の味
夏痩や枕にいたきものの本
板敷や昼寐をめぐる山の 蟻
世の中の重荷おろして昼寐哉
ことづてよ須磨の浦わに昼寐すと
雨乞やをさな心におそろしき
茶屋ありや山辺の水の心太
清水の阪のぼり行く日傘かな
古庭や水打つ夕苔くさき