和歌と俳句

正岡子規

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横雲に夏の夜あける入江哉

短夜のともし火残る御堂哉

短夜や一寸のびる桐の苗

明け易き頃を鼾のいそがしき

短夜の足跡許りぞ残りける

六月を綺麗な風の吹くことよ

水無月の須磨の緑を御らんぜよ

昼中の白雲涼し中禅寺

涼しさや松這ひ上る雨の蟹

涼しさや波打つ際の藻汐草

すずしさや須磨の夕波横うねり

涼しさや石燈籠の穴も海

涼しさや平家亡びし波の音

須磨寺に取りつく迄の

炎天や蟻這ひ上る人の足

ほろほろと朝雨こぼす土用

更衣少し寒うて気あひよき

行列のの橋にかかりけり

くらべ馬おくれし一騎あはれなり

風呂の隅に菖蒲かたよせる女哉

あはれさはに露もなかりけり

暮れて五日の月の静かなり

朝嵐隣の幟立てにけり

山里に雲吹きはらふ幟かな

人の妻の菖蒲葺くとて楷子哉