和歌と俳句

昼寝 午睡

糊ごはな帷子かぶるひるねかな 惟然

かたびらのそこら縮て昼寐かな 太祇

蠅いとふ身を古郷の昼寝かな 蕪村

逢坂や荷牛の上に一昼寝 一茶

山水に米を搗かせて昼寝哉 一茶

身動きに蠅のむらたつひるね哉 子規

掛茶屋は盧生に似たる昼寝哉 子規

板敷や昼寐をめぐる山の蟻 子規

世の中の重荷おろして昼寝哉 子規

歌書俳書紛然として昼寐哉 子規

うき世いかに坊主となりて昼寐する 漱石

内閣を辞して薩摩に昼寐哉 子規

足しびれて邯鄲の昼寐夢さめぬ 子規

霊山や昼寐の鼾雲起る 子規

昼寐する人も見えけり須磨の里 子規

愕然として昼寝さめたる一人かな 碧梧桐

法華経を枕にしたる昼寝かな 虚子

一日をひるねに行くや甥の寺 虚子

李斯伝を風吹きかへす昼寐かな 子規

画き終へて昼寐も出来ぬ疲れかな 子規

僧堂や昼寝覚めよの銅鑼が鳴る 虚子

松風に近江商人昼寐かな 鬼城

苔の香や午睡むさぼる杣が眉 石鼎

ひきかけて大鋸そのままや午寝衆 石鼎

昼寝客起すは茶屋の亭主かな 虚子

母すでに午寝さめたる流しもと 石鼎

足の裏見えて僧都の昼寝かな 龍之介

いつの間に壁に向きゐし午寝かな 石鼎

昼寝して宇治と思ひし我家かな かな女

肝腎な用忘れたり昼寝妻 みどり女

ひる寝ふかく蝿の翼をゆめみたり 石鼎

読みて見し読みし頁や昼寝覚 爽雨

汲み水に落ちし松風昼寝ざめ 泊雲

昼寝起きればつかれた物のかげばかり 放哉

昼寝の足のうらが見えてゐる訪ふ 放哉