雷止んで太平簫ひく凉かな
蝿をうつ首も厳しや関の人
夜を寐ぬと見ゆる歩みや蝸牛
怠ぬあゆみおそろしかたつぶり
水の中へ銭遣リけらし心太
もとの水にあらぬしかけや心太
蚊屋釣てくる ゝ友あり草の庵
世の外に身をゆるめゐる暑かな
あつき日に水からくりの濁かな
色濃くも藍の干上るあつさかな
釣瓶から水呑ひとや道の端
虫ぼしや片山里の松魚節
来し跡のつくが浅まし蝸牛
草の戸の草に住 蚊も有ときけ
水練の師は敷草のす ゞみ哉
あしらひて巻葉添けり瓶の蓮
蓮の香や深くも籠る葉の茂
先いけて返事書也蓮のもと
たつ 蝉の声引放すはづみかな
かたびらのそこら縮て昼寐かな
昼顔や夜は水行溝のへり
夕顔のまとひも足らぬ垣根かな
白雨や戸さしにもどる艸の庵
ゆふだちや落馬もふせぐ旅の笠
橋落て人岸にあり夏の月