和歌と俳句

炭 太祇

雷止んで太平簫ひく凉かな

をうつ首も厳しや関の人

夜を寐ぬと見ゆる歩みや蝸牛

怠ぬあゆみおそろしかたつぶり

水の中へ銭遣リけらし心太

もとの水にあらぬしかけや心太

蚊屋釣てくる ゝ友あり草の庵

世の外に身をゆるめゐる暑かな

あつき日に水からくりの濁かな

色濃くも藍の干上るあつさかな

釣瓶から水呑ひとや道の端

虫ぼしや片山里の松魚節

来し跡のつくが浅まし蝸牛

草の戸の草に住 も有ときけ

水練の師は敷草のす ゞみ

あしらひて巻葉添けり瓶の蓮

蓮の香や深くも籠る葉の茂

先いけて返事書也蓮のもと

たつ の声引放すはづみかな

かたびらのそこら縮て昼寐かな

昼顔や夜は水行溝のへり

夕顔のまとひも足らぬ垣根かな

白雨や戸さしにもどる艸の庵

ゆふだちや落馬もふせぐ旅の笠

橋落て人岸にあり夏の月