蛍火や岸にしづまる夜の水
柳みんよそに夕立あまり風
蝙蝠や千木みえわかる闇の空
雨の日は行かれぬ橋やかきつばた
一日は物あたらしき五月雨
たけの子や己が葉分に衝のぼる
底見へて鵜川あさまし夜の水
八重雲に朝日のにほふ五月哉
手から手へわたしわづらふ蛍かな
若竹や数もなき葉の露の数
ゆふだちの月に成ぬる鵜川かな
今朝みれば夜の歩みやかたつむり
笋やほりつ ゝ行けばぬいた道
早乙女の下りたつあのたこの田哉
旅びとや曽我の里とふ五月雨
みじかよや旅寐のまくら投わたし
古き代を紋に問るゝのぼりかな
塩魚も庭の雫やさつきあめ
岩角や火縄すり消す苔の花
旅立を人もうらやむ袷かな
ほとゝぎすきくや汗とる夜着の中
影高き松にのぞむや蝸牛
君めして突せられけりこゝろぶと