和歌と俳句

炭 太祇

ひとり言いふて立さる清水

関守の背戸口にたつ凉み

片道はかはきて白し夏の月

屋根葺は屋根で凉の噂かな

酔ふして一村起ぬ かな

虫ぼしのす ゞしさかたれ角櫓

まし水にあやうき橋を かな

鉾処々にゆふ風そよぐ囃子哉

老たりといふや祭の重鎧

まつりの日屏風合の判者かな

花鳥もうら絵はうすき扇かな

酒蔵に蝿の声きく かな

かたびらの癖はつきよき腕まくり

凉風に角力とらふよ草の上

むし干やむかしの旅のはさみ箱

水打て露こしらへる門辺哉

草の戸や畳かへたる夏祓

落ち初めし滝津瀬いづく吉野川