和歌と俳句

蝸牛 かたつぶり ででむし

梁塵秘抄巻二
舞へ舞へ蝸牛 舞はぬものならば 馬の子や牛の子に蹴ゑさせてん  踏み破らせてん 実に美しく舞うたらば 華の園まで遊ばせん

猫の子に嗅れて居るや蝸牛 才麿

かたつぶり角ふりわけよ須磨明石 芭蕉

かたつぶり酒の肴に這はせけり 其角

我むかし踏みつぶしたる蝸牛哉 鬼貫

白露や角に目を持かたつぶり 嵐雪

傘にたゝみこみけり鍋牛 也有

我庵に火箸を角や蝸牛 蕪村

東へも向磁石あり蝸牛 蕪村

ででむしやその角文字のにじり書 蕪村

蝸牛何おもふ角の長みじか 蕪村

こもり居て雨うたがふや蝸牛 蕪村

みのむしはちちとも啼をかたつぶり 蕪村

蝸牛のかくれ顔なる葉うら哉 蕪村

出る杭のうつつなき身やかたつぶり 蕪村

かたつぶりけさとも同じあり所 召波

たのみなき角としおもへ蝸牛 暁台

おもひ得たり竹三竿にかたつむり 暁台

煤茅にすゝけておかしかたつぶり 白雄

かたつぶり落けり水に浮もする 白雄

夜を寐ぬと見ゆる歩みや蝸牛 太祇

怠ぬあゆみおそろしかたつぶり 太祇

来し跡のつくが浅まし蝸牛 太祇

今朝みれば夜の歩みやかたつむり 太祇

影高き松にのぞむや蝸牛 太祇

角出して這はでやみけり蝸牛 太祇

三つよれば其師やあらん蝸牛 青蘿

三日月の木ずゑに近し鍋牛 几董

足元へいつ来たりしよ蝸牛 一茶

石原や照つけらるる蝸牛 一茶

朝やけがよろこばしいか蝸牛 一茶

石原や照つけらるる蝸牛 一茶

山艸に目をはじかれな蝸牛 一茶

夕月や大肌ぬいでかたつぶり 一茶

蝸牛みよみよおのが影ぼふし 一茶