花七分若紫にわか葉さす
わかばして浮世に心うつり哉
雨雲のかき乱し行若葉かな
雪を噛て一峯こえぬ夏木立
みどり長く夕雨廻るあらし山
牛舟やたけの子時の佐渡便り
笋やひと夜にかづく八重葎
わか竹は月に養ふけしきかな
若たけや一宇の灯深からず
草臥や百合になぐさむ鳳来寺
空ざまにゆり咲て日を禀るかな
見る人のみるものにせよ金銀花
針の有こ ゝろに蓼のほそ葉哉
花あやめ五尺の露をあぐるかな
草の戸のくさより出て蓬ふく
粽はけて淀のゝあらしわたるかな
行方なき蟻のすさびや五月雨
さみだれや岸の山吹ふりしづめ
かはほりや古き軒端の釣しのぶ
蚊ばしらや棗の花の散あたり
はへにくしこゝろの先へたち廻り
袖に見むみよしのゝ蚤三輪の蟻
初蝉や初瀬の雲のたえ間より
薄雲の山路をすますせみの声
盃のうへに吹る ゝほたるかな
蛍火や風の笹山吹おろし