和歌と俳句

加藤暁台

たのみなき角としおもへ蝸牛

おもひ得たり竹三竿にかたつむり

かづらきの皇子よりや奥の田植うた

つらりつらりうゑ田の縁の百からす

鳩の巣に吹とらる ゝな田うゑがさ

あぢさゐやよれば蚊の鳴花のうら

葩を葉におく風の蓮かな

草あらふ流の末や苔しみづ

汲てしれ命にかゝる苔清水

此奥に聖おはしぬ苔の花

桐のはな寺は桂の里はづれ

山本や鹿の子迷はす鵜のかゞり

はなれ鵜の火を得さらぬも泪かな

鞍つぼに酒吸ふ門やかきの花

鮓うりのかざしにとれや花樗

漉水の雫かすりてはなおほち

ゆふがほの花立されよ夜の蝿

ゆふがほのはなをちからや木曽の奥

初うりやまづ畑ぬしの茶振舞

冷し瓜宇治の堰にか ゝりけり

見つ ゝゆけば夕立きえぬ清見潟

夕立や一棹岸へたらぬ舟

六月の埋火ひとつ静なり

夕すゞみの岸や崩らむ

草の戸や柳すかして夕すゞみ