和歌と俳句

夏木立

定家
そめぬより時雨まつらし大井川嵐の山のなつの木のもと

有家
花はみな散りはてにけり夏木立みどりも春の色ならぬかは

なつ木立はくやみ山のこしふさげ 芭蕉

啄木もいほはやぶらず夏木立 芭蕉

先たのむ椎の木も有夏木立 芭蕉

かしこくも茶店出しけり夏木立 蕪村

動く葉もなくておそろし夏木立 蕪村

酒十駄ゆりもて行や夏こだち 蕪村

とろろ汲む音なしの滝や夏木立 蕪村

花か実か水にちりうかむ夏木立 蕪村

いづこより礫うちけむ夏木立 蕪村

谷河の空を閉るや夏こだち 召波

夏木立阿闍梨の供のおくればせ 召波

雪を噛て一峯こえぬ夏木立 暁台

夜渡る川のめあてや夏木立 太祇

甘き香は何の花ぞも夏木立 太祇

塔ばかり見へて東寺は夏木立 一茶

遥拝す御廟は白し夏木立 一茶

刀禰川は寝ても見ゆるぞ夏木立 一茶

夜駄賃の越後肴や夏木立 一茶

堂守が茶菓子うる也夏木立 一茶

法談の手まねも見えて夏木立 一茶

良寛
わくらばに訪ふ人もなき我が宿は夏木立のみ生ひしげりつつ