和歌と俳句

夏羽織

身にからむ単羽織もうき世哉 其角

手に持ば手にわづらはし夏羽織 几董

夏羽織われをはなれて飛ばんとす 子規

破れ易し人のかたみの夏羽織 子規

風呂敷に包んで持てり夏羽織 鬼城

老が身に短く着たり夏羽織 鬼城

夏羽織とり出すうれし旅鞄 久女

夏羽織連句の席にたゝむかな 喜舟

印籠の蒔絵の金や夏羽織 喜舟

夏羽織著て我に逢へり妻の前 花蓑

夏羽織着て下町へ妻とかな 亜浪

あととりや人と成りたる夏羽織 花蓑

夏羽織短き紐のそらほどけ 淡路女

紋のなき夏羽織被て書庫を守る しづの女

吹きつけて痩せたる人や夏羽織 虚子

身のほどを知る夏羽織著たりけり 万太郎