屋根石にしめりて旭あり花棗
濃霧晴れし玻璃に映れる四葩かな
山冷えに羽織重ねしゆかたかな
行水の提灯の輪うつれる柿葉うら
行水や肌に粟立つ黍の風
鏡借りて発つ髪捲くや明けやすき
草いきれ鉄材さびて積まれけり
草いきれ連山襞濃く刻みけり
北斗燗たり高原くらき草いきれ
草いきれ妖星さめず赤きかな
赤き月はげ山登る旱かな
灯れば蚊のくる花柿の葉かげより
花柿に簾高く捲いて部屋くらし
障子しめて雨音しげし柿の花
藻の花に自ら渡す水馴棹
水荘の蚊帳にとまりし蛍かな
藻を刈ると舳に立ちて映りをり
藻刈竿水揚ぐる時たわみつつ
夏帯やはるばる葬に間に合わず
上陸やわが夏足袋のうすよごれ
夏羽織とり出すうれし旅鞄
替りする墨まだうすし青嵐
卓の百合あまり香つよし疲れたり
姫著莪の花に墨する朝かな