羅に衣通る月の肌かな
遠泳の子らにつきそひ救助船
潮あびの戻りて夕餉賑かに
上つ瀬に歌劇明りや河鹿きく
水疾し岩にはりつき啼く河鹿
河鹿きく我衣手の露しめり
ひきのこる岩間の潮に海ほうづき
薔薇むしる垣外の子らをとがめまじ
藁づとをほどいて活けし牡丹かな
牡丹を活けておくれし夕餉かな
牡丹やひらきかかりて花の隈
牡丹や揮毫の書箋そのままに
牡丹にあたりのはこべ延ぶがまま
牡丹にあたりのはこべ抜きすてし
端居して月の牡丹に風ほのか
隔たれば葉蔭に白し夕牡丹
紅苺垣根してより摘む子来ず
凌霄花の朱に散り浮く草むらに
流れ去る雲のゆくえや青芭蕉
晴天に広葉をあほつ芭蕉かな
夕顔や遂に無月の雨の音
かへり見ぬ葡萄の蔓も花芽ぐむ
霖雨や泰山木の花墜ちず
活け終へて百合影すめる襖かな
上げ潮にまぶしき芥花楝