夕凪や釣舟去れば涼み舟
灯せる遊船遠く現はれし
夏祭り髪を洗つて待ちにけり
風鈴に黍畠より夜風かな
孤り居に風鈴吊れば黍の風
帽子ぬぐや汗に撚れあふもつれ髪
金魚掬ふ行水の子の肩さめし
虫干やつなぎ合はせし紐の数
新茶汲むや終りの雫汲みわけて
枕つかみて起上りたる昼寝かな
夏痩のおとがひうすく洗ひ髪
夏痩の頬も色どらず束ね髪
子らたのし夏痩もせず海に山に
帰省子に糸瓜大きく垂れにけり
湖を泳ぎ上りし木蔭かな
羅を裁つや乱るる窓の黍
夕闇の中に蟇這ふけはひかな
つれづれのわれに蟇這ふ小庭かな
昼灯すみ山燈籠やひきがへる
生き鮎の鰭をこがせし強火かな
笹づとをとくや生き鮎ま一文字
鮎やけば猫梁を下りて来し
登り来ては杭をとび散る羽蟻かな
ゐもり釣る童の群にわれもゐて
玉虫や瑠璃翅乱れて畳とぶ