和歌と俳句

夏草


野辺ごとに茂る夏草ふかくこそ契りおきしか千歳枯れじと

好忠
野中にはゆきかふ道も見えぬまでなべて夏草繁りあひけり

後拾遺集 重之
夏草はむすぶ許になりにけり野がひし駒もあくがれぬらん

新古今集 藤原元眞
夏草は茂りにけりなたまぼこの道行く人もむすぶばかりに

定家
夏山の草葉のたけぞ知られぬる春見し小松人しひかずは

定家
菅の根や日かげもながくなるままにむすぶばかりに茂る夏草

定家
あげまきの あとだにたゆる 庭もせに おのれむすべと しげる夏草

定家
ふみしだく安積の沼の夏草にかつみだれそふ信夫もぢずり

定家
さゆり葉にまじる夏草しげりあひてしられぬ世にぞくちぬと思し

定家
ふみしだく安積の沼の夏草にかつみだれそふ信夫もぢずり

続後撰集・夏 実氏
露むすぶ まがきにふかき 夏草の 何ともなしに ことしげの身や

石の香や夏草赤く露あつし 芭蕉

夏草や兵共がゆめの跡 芭蕉

夏艸に富貴を餝れ蛇の衣 芭蕉

夏艸や我先達て蛇からむ 芭蕉

夏草の根も葉もどちへどうなりと 鬼貫

夏草やうき世を覗く窓一ツ 青蘿

夏草や立よる水は金気水 一茶

良寛
夏草のしげりにしげる我が宿は狩りとだにやは訪ふ人はなし