夏草に延びてからまる牛の舌 虚子
濡縁はあれど夏草身に迫る 誓子
夏草を行かねばならず父の墓 林火
夏草や父の墓石つねに小さく 鷹女
敗北を負ひ一望の夏草に 鷹女
夏草や数へがたきは未知の友 草城
夏草の中の膝にて校正す 静塔
夏草をちぎれば匂ふ生きに生きん 綾子
都電路に剛き夏草馘れず 不死男
夏草やめざまし刻をきざまざる 源義
夏草や鴉は黝くうなじ垂れ 源義
夏草や砦構へに狭田長田 風生
夏草や鴉は墓より海に出づ 源義
夏草や家より高き海の容 源義
わが丈を越す夏草を怖れけり 鷹女
夏草の毛深き伊賀の私鉄線 誓子
夏草も一景をなす坊の庭 虚子
夏草にうめく鉄路の切れつぱじ 三鬼
夏草に埃の如き蝶の飛ぶ 虚子
長柄大鎌夏草を薙ぐ悪を刈る 三鬼
吾去れば夏草の領白毫寺 多佳子
夏草の今も細道俳句の徒 三鬼
夏草や城砦にして獄なり 汀女