手のとどくごとき白雲麻畑に
月見草飯綱山は裾長し
戸隠の少年馬上閑古鳥
ほととぎす一時雨せし笹径
ほととぎす焚火のまなかくづれけり
郭公やいつも出てゐる田草取
六月風墓のうしろも影はなし
壁に倚り長き昼寝をかへりみる
静臥時は廃墟に似たり花石榴
花石榴咳くゆゑひとに逢はぬなり
くらければ障子をあけぬ額の花
夕焼けて透く雲あまた黍嵐
ひるがほの花の輪海の舟かくす
岩礁をとぶ夏蝶海の上へ行かず
炎昼のいづこも巌が海劃る
蟻地獄雀のこゑをふりかぶり
ひとごゑをききゐるごとく蟻地獄
どくだみのくもりのひとを近づけず
夜の秋の投げだす足裏闇に向く
崖崩えて夏日返すや父の墓
夏草を行かねばならず父の墓
六月や牛の鼻筋白くして
だんだらの日覆くだもの赤青黄
喜劇見て炎天のもの皆歪む
風雲の月ほのじろき蚊帳かな