和歌と俳句

額の花

そりかへる額の花あり蜘が為 青畝

橋ありて水なかりけり額の花 淡路女

門あるきけさは額咲く水に沿ひ 

額の花手折らんとする沢深み 野風呂

緑蔭を立ち出づるとき額咲ける 汀女

秘めかねし憂き目や雨の額の花 友二

おのづから額咲く道に歩をすすむ 波津女

会のたび花剪る今日は額を剪る 虚子

美しや蒼黒き溝額の花 誓子

擲つて弁を毀ちし額の花 誓子

額の花星へ匂ふよ飢しのぐ 知世子

額の花暗き根本へ風沈む 知世子

くらければ障子をあけぬ額の花 林火

僧恋うて僧憎しや額の花 多佳子

奥入瀬や額の花叢縫ひ下る 立子

遊船の岸近くゆく額の花 立子

額の花其他は額の花に似て 青畝

額の花病に隠るることなかれ 波郷

生と死といづれか一つ額の花 鷹女

額が咲き死さへ納得できぬのに 不死男

よく撥ねる流の鱒や額の花 青畝