和歌と俳句

橋本多佳子

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松高き限りを凌霄咲きのぼる

僧恋うて僧憎しや額の花

こがね虫朝は殺さず嘆きけり

翡翠の飛ばねばものに執しをり

くらがりに捨てし髪切虫が啼く

わがそばに夜を猫が啼かし啼かし

蟻地獄孤独地獄のつづきけり

断崖へ来てひたのぼる蛍火

蛍籠昏ければ揺り炎えたたす

水鶏笛吹けばくひなの思い切

はしりとどまりて走り蟻に会ふ

毛虫焼く焔が触るるものを焼く

日盛りや脚老い立てる一羽鶴

甲虫しゆうしゆう啼くをもてあそぶ

拾ひたる空蝉指にすがりつく

炎天や雀降りくる貌昏く

乳母車夏の怒涛によこむきに

雲の峰立ちてのぞける乳母車

帰りゆく人のみ子等と蝸牛

日焼童子洗ふやうらがへしうらがへし

啼きひびくを裸子より受けとる

女童泣き男童抱くの下

夏雲の立ちたつ伽藍童女うた

童女うた伽藍片陰しそめけり