和歌と俳句

大野林火

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白雨いま蝉音七堂伽藍濡れ

肩車され月近し五月の子

佛の地白雲下りしごとく

朴の花大揺れ風を運ぶかに

白珠に戻りし朴の花に月

梅雨嵐朴の白珠葉がかばひ

小鳥抜けホツプの花の香をゆらす

岩を越す水の香つよし夏薊

郭公の遠さ水源林といふ

余花明り溯る魚ありにけり

月明の書を出て遊ぶ紙魚ひとつ

紙に紙魚のせて雨夜のあそびかな

つばめ飛び篠も今年のそよぎぶり

蒸すけむりのぼれり青杉添ひ

どぶろく一石神酒夏雲も起りけり

絵すだれにまつりのゆきき重なれり

僧坊の昼寝牡丹を夢にせる

合歓咲いて湖に古き津伝へけり

きりもなきさみだれ鳰の長潜り

荒塩に焼かれて湖の魚も夏

日は燦と浮巣に卵水びかり

雑文を間にはさみて夜の秋

西日歩き余り者にも似たるかな

活けて壺の濡れいろ適ひけり

老ひしことありありと着る白絣