白雨いま蝉音七堂伽藍濡れ
肩車され月近し五月の子
佛の地白雲下りしごとく朴
朴の花大揺れ風を運ぶかに
白珠に戻りし朴の花に月
梅雨嵐朴の白珠葉がかばひ
小鳥抜けホツプの花の香をゆらす
岩を越す水の香つよし夏薊
郭公の遠さ水源林といふ
余花明り溯る魚ありにけり
月明の書を出て遊ぶ紙魚ひとつ
紙に紙魚のせて雨夜のあそびかな
つばめ飛び篠も今年のそよぎぶり
粽蒸すけむりのぼれり青杉添ひ
どぶろく一石神酒夏雲も起りけり
絵すだれにまつりのゆきき重なれり
僧坊の昼寝牡丹を夢にせる
合歓咲いて湖に古き津伝へけり
きりもなきさみだれ鳰の長潜り
荒塩に焼かれて湖の魚も夏
日は燦と浮巣に卵水びかり
雑文を間にはさみて夜の秋
西日歩き余り者にも似たるかな
朴活けて壺の濡れいろ適ひけり
老ひしことありありと着る白絣