梔子のあたり死神さまよへり
かたばみの花より淋し住みわかれ
ぼうたんを好めば帯にこの花を
一八の花のほとりに封を切る
千年の樗の花に棲み古りぬ
樗まだ散らずと誓子句集にも
蟻出でて草田男句集径に読む
向日葵を剪るみほとけの花ならず
蕗を煮る母よ五月も束の間に
梧桐のはや夕焼を隠し得ず
きのふ見て旱や鉄線の花あらず
炎天へ蝶まつすぐにまつすぐに
帯売ると来て炎天をかなしめり
緑蔭に胃薬呑むこと憚らず
縋らむとして向日葵もかなしき花
一本のペンが懐剣や夏深く
紫蘇の香や哀しくなりし母の齢
夏草や父の墓石つねに小さく
つれなさの切なさの青唐辛子
百日紅われら初老のさわやかに
五十の手習百日紅の咲く間は
忍冬のこの色欲しや唇に
何事を告ぐるや蟻の青惶と
うらかなし葵が天へ咲きのぼる
ねむり草眠らせてゐてやるせなし