和歌と俳句

秋元不死男

佛像をの一匹出没す

愛し得て立つや木移る蝉の声

家に死すの総身黒色に

土を出て直ぐ松風へ蟻のぼる

中心に仏の微笑梅雨かこむ

絶壁に神神し海が鳴る

西方に師のをり栗の花くぐる

税重し向日葵の影鉄管に

炎天充つ青年と影を同じうし

地におちてひびきいちどのわくらば

白樺派老いぬ路傍に夏木なく

炎昼へ製氷の角をどり出る

炎天へ孤児の孤影を引つぱり出す

なめくぢら師恩に泣きしことのなし

五月そよ風病臥の肘へ薪割る音

河童忌の枝抱いて寝る街の蛇

都電路に剛き夏草馘れず

街道に井戸の跼める芥子の花

向日葵の金の雨だれ終りしよ

枇杷の種赤く吐き出す基地の階

甘きものにふらして基地忘る

姉妹のしづまりかへる田掻かな

縛されて念力光る兜蟲

稿急ぐ落葉色して訪る

片蔭へ沈む祭の笛の声