和歌と俳句

芥子の花

垂れ首の芥子の高さになりにけり 碧梧桐

罌粟咲けばまぬがれがたく病にけり たかし

白芥子のひそかなる香に眼をつむる 三鬼

夕闇に芥子も夫人も白かりき 三鬼

己れ毒と知らで咲きけり罌粟の花 虚子

芥子咲けば碧き空さへ病みむべし 鳳作

ネクタイを結ぶときふと罌粟あかし 風生

紅罌粟の紅に一ト日の歴史あり しづの女

罌粟咲かせ病かなしき人臥たり 秋櫻子

けし散りぬ掟は人の世に重く 鷹女

芥子散ればおもき頭蓋がわれにある 鷹女

芥子散つて細菌髪の毛をねらふ 鷹女

罌粟燃ゆる遠白波もくもれる日 悌二郎

罌粟あかし漁港三崎へ坂くだる 悌二郎

緋の衣すてたる芥子は鉄十字 茅舎

白芥子のはなびら暮れてさだまりき 楸邨

芥子咲くやけふの心の夕映に 秋櫻子

芥子詠んで黄河を越えき芥子を見ず 楸邨

罌粟ひらく髪の先まで寂しきとき 多佳子

午後の日の暈に僧院は罌粟咲けり 秋櫻子

街道に井戸の跼める芥子の花 不死男

ちりかかる芥子に諸の葉ほとばしり 爽雨

一瓣の残りそびえて芥子暮るる 爽雨

口噤ぐあまたの莟芥子の昼 爽雨

アトリエの床に芥子散る淋漓たり 爽雨

清姫といふ邑すぎて芥子紅し 秋櫻子

毒ならば美しくあれ芥子を見る 青畝

ゆらゆらと亡母われ呼ぶ罌粟のかげ 不死男