草高し芍薬の花いつかなし
泡一つ抱いてはなさぬ水中花
咲あふれ牡丹なるや水中花
蜘蛛の囲の遮る径は返すべし
バス囃す小わつぱどもや独活の花
ネクタイを結ぶときふと罌粟あかし
風鈴の下にけふわれ一布衣たり
夕涼し網代の簷の深ければ
用ひざる団扇を立つる老の膝
鮎さしの鳴く音も雨の多摩河原
談笑のいと朗かに梅雨の宿
見送りの妻ばかりなる旅涼し
麻茂り伏屋の軒を見せじとす
旗かざし玉藻の浦の遊び舟
金魚らの仰向く水を見下して
瓜刻む足もとに来て蟹可愛
夕焼は膳のものをも染めにけり
土の黴木の根の黴や神さびぬ
薔薇を見る少女らの帽すでに白く
見張鵜らうなじを長く雲は夏
梅雨晴の雲一と流れ立葵
風鈴しやべり通し団扇とと走り
仲見世の日覆の浅き扇店
瀧の前おしろい紙がとんでゐる