青鬼灯かたちづくれるほほゑまし
百姓着ぬいで籐椅子にくつろぎぬ
子供鍬老に適ひて草削る
天龍のへりに椅子おく夕涼み
世の憂さのまとふ衣を更へにけり
夕浪の刻みそめたる涼を納る
玉の緒にすがりて耐ふる大暑かな
緑陰の海よりしづかなる憩ひ
麦の出来わろし夕焼美しく
榻二つ生きて濡れをる夏の雨
大船を引きすゑてある油照
人休み機械働く日の盛り
門の麦刈り伏せければ鯖火見ゆ
青鯖を女房が割く立葵
老鶯や珠のごとくに一湖あり
菖蒲湯に深く老躯を沈めけり
羅の双肩怒る衣紋竹
湖の雨の涼しき胡瓜揉
せはしげに安風鈴の鳴り通し
渓若葉二橋を架して二亭あり
蕗茂り一陶榻を没了す
蟻地獄額の日月古りにけり
目を落す水の浮葉も孤なり
展望の一舟一鳶五月富士
緑蔭を襖のうしろにも感ず
蟻地獄寂寞として飢ゑにけり
満山の緑の中の干し浴衣
妻ごめの古蚊帳たるむ顔の上
さからはず十薬をさへ茂らしむ
一生の楽しきころのソーダ水