和歌と俳句

茨の花

好忠
なつかしく手にはとらねど山がつの垣根のむばら花咲きにけり

色に香に江戸せぬ武士や花いばら 来山

花に針心知りたき茨かな 千代女

花いばら古郷の路に似たる哉 蕪村

愁ひつつ岡にのぼれば花いばら 蕪村

路たえて香にせまり咲くいばらかな 蕪村

山吹のうの花の後や花いばら 蕪村

道のべの低きにほひや茨の花 召波

茨の花爰をまたげと咲にけり 一茶

古郷やよるもさはるも茨の花 一茶

茨垣や上手に明し犬の道 一茶

茨さくや根岸の里の貸本屋 子規

香をさます夕風茨の野道かな 碧梧桐

人行かぬ旧道せまし茨の花 虚子

茨の花二軒竝んで貸家あり 虚子

裏戸近く夕汐さすや茨の花 虚子

寂として残る土階や花茨 虚子

茨の香やなど墾かずと訪ふ心 碧梧桐

花茨や里なづむ頃灰降りて 碧梧桐

茨咲くや二三荷流す牛の糞 鬼城

利玄
草堤の茅が根もとに野いばらの白く泣き居る夏の停車場

利玄
ほのぼのとわがこころねのかなしみに咲きつづきたる白き野いばら

赤彦
五月雨になりたるならむ街うらににほひ著るき野茨の花

牧水
道ばたの埃かむりてほの白く咲く野茨の香こそ匂へれ

郷音をなつかしみ行く花茨 虚子

花茨かぶさりかかる野水かな 虚子

花茨此道行けば城下かな 虚子

杖もつて花ざかりなる 茨かな 普羅

野いばらの水漬く小雨や四つ手網 秋櫻子

貧しき家をめぐる野茨月貴と 久女