和歌と俳句

高浜虚子

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明治31年

女房の古りにけるかも笹粽

僧俗の交りあはきかな

妻ごめに八重垣つくる二つ繭

百人一首を行列にする祭りかな

薔薇の花楽器いだいて園にいでぬ

芝居見はおしろい花に紅の花

へご鉢の水まさりけり五月雨

梅の実を必ずくるる隣あり

夜半に起きて蚊をやく母の病かな

蚊をやいて子をいとほしむ火影かな

草の家にひくくたれたる蚊帳かな

蚊遣火の煙遮る団扇かな

蚊遣火やこの時出づる蚊喰鳥

蚊遣火や縁に置いたる馬の沓

盥舟雲の峰迄至るべく

磐石の微動してゐる清水かな

旅人の立ちよる裏の清水かな

涼み笛吹く人をとりまきぬ

打水や空にかかれる箒星

打水や石燈籠にともすべく

早鮓や人をもてなす夕まうけ

法華経を枕にしたる昼寝かな

病む母に父の形見の土用干

蓮臭き佛の飯を茶漬かな