和歌と俳句

夏野

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家あるまで夏野六里と聞えけり 子規

絶えず人いこふ夏野の石一つ 子規

旅人の兎追ひ出す夏野哉 子規

電信の棒隠れたる夏野かな 子規

行列の草に隠るる夏野かな 子規

夏野尽きて道山に入る人力車 子規

山を越えて他藩に出でし夏野かな 虚子

かたまりて黄なる花さく夏野哉 子規

夏野行く人や天狗の面を負ふ 子規

馬に乗る人を彼方に夏野かな 碧梧桐

沼に出れば魚とり居る夏野かな 虚子

拓きかけて木棉つくれる夏野かな 虚子

御領地の堺木うちに夏野かな 虚子

人何処に酔を買ひ来し夏野かな 碧梧桐

砲も過ぎしと教ふ夏野の車道哉 碧梧桐

島渡り明日はと望む山夏野 碧梧桐

笹の中を植林の道を山夏野 碧梧桐

北千住金魚屋もある夏野かな 万太郎

ぐわうぐわうと夏野くつがへる大雨かな 鬼城

棺桶を舁けば雲ひろき夏野かな 蛇笏

海道を衝くべき道の夏野かな 喜舟