百合の山路越え来て合歓の花の里
売り値待つ繭の主や秋近き
巫女頼む家の紫陽花垣間見し
持山の果なし藪や雲の峰
河骨も絵図にかきけり干満寺
削氷や鉾に乗る子にかしづきぬ
葉裏白き庭木吹く風蚊の出る
蚊柱や鐘楼の方に草深し
雨の若葉梁にや映る山家かな
明易き物嵩川岸の人声に
流れ藻も風濁りして行々子
芝平ら湖に住む家の百合燃えて
葭切に臥竜の松の茶店かな
森林帯沮洳に咲く花夕立ちて
森の楼薫風に立つ鷺も見て
茨の香やなど墾かずと訪ふ心
人何処に酔を買ひ来し夏野かな
蟹とれば蝦も手に飛ぶ涼しさよ
飯綱より雲飛ぶ橡の若葉かな
花茨や里なづむ頃灰降りて
砲も過ぎしと教ふ夏野の車道哉
下山して蚊帳吊る夜も田植寒む
闘ひし牛とりこめぬ栗の花
富守れば父祖の蔵書も風薫る
山寺へ上す籠雉や風薫る
畳み持てば君に柄長な日傘かな