和歌と俳句

河東碧梧桐

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五月の水の飯粒の流れ

清水ある道の人声の蕗

麦稈嵩に締め合せある障子

蚊の腹白き眉近く過ぐる

扇握りゐたる指を開けり

水汲みし石垣の日ざかり迫る

蟻地獄に遠しつぶらなる

土用稽古半ば過ぎたる顔並べ

すずみし裸の袖とほす衣

すずみに出でし風あたる銀杏

ダリヤ伸び伸び茂れる早き

頭上に鳴く蝉鳴かずまだをる

壁にベタと蝙蝠の音の蛍火

葉桜の灯の遠い浅草の灯に立ち

青い実が出来た苺の葉傷み

子に高々と祭の飾り花を挿し

てもなく写生してしまひし石竹がそこにあり

毛虫が落ちてひまな煙草屋

まひまひが舞ひ蓮の莟は空に

子規庵のユスラの実お前達も貰うて来た

枝立つた無花果が葉になりつぼむやと仰ぎ

道に迷はず来た不思議な日の夾竹桃

夾竹桃赤いものを振り捨てんとす

白き日覆の我舟湖心に浮び出づれ

中庭の籐椅子空いたのがなく旅の大声