子規
ふみわけて 上る山路の 雪ならで 駒のあがきに ゆらぐ卯の花
卯の花に雲のはなれし夜明哉 子規
卯の花にかくるゝ庵の夜明哉 子規
おしあふて又卯の花の咲きこぼれ 子規
卯の花に白波さわぐ山路哉 子規
卯の花や盆に奉捨をのせて出る 漱石
細き手の卯の花ごしや豆腐売 漱石
晶子
五月雨もむかしに遠き山の庵通夜する人に卯の花いけぬ
卯の花や仏も願はず隠れ住む 虚子
筧浚ふ人も卯の花露明り 碧梧桐
卯の花や巫女ともなくてくしけづる 鬼城
赤う咲いてそらぞらしさや毒うつぎ 鬼城
炭竃の煙らで涼しうつぎ咲く 鬼城
卯の花や戸さされぬまの夜気に寝ん 水巴
牧水
此処の野にいま咲く花はただ一いろ紅うつぎの木のくれなゐの花
卯の花の夕べの道の谷へ落つ 亞浪
卯の花や四五丁遠き女坂 喜舟
卯の花に噴き流れ井や漁師町 喜舟
ありと聞く温泉宿はいづこ花卯木 風生
顔入れて馬も涼しや花卯木 普羅
うまい水の流れるところ花うつぎ 山頭火
たちよれば花卯盛りに露のおと 蛇笏
めにたちて卯つ木の花のましろにぞ 草城
卯の花や厨のともし今は消え 青邨
卯の花や流るるものに花明り たかし
花卯木水模糊として舟ゆかず 蛇笏
山路やうつぎの隙の海の紺 みどり女
卯の花のかむさり咲ける茂りかな たかし
卯の花や兄の書斎に一日ゐて 青邨
卯の花やうす紫の著物欲し 立子
卯の花に昼の稲妻ただ黄いろ 茅舎
卯の花にねむりの浅き旅をゆく 占魚