筍のまはりの土のやさしさよ
筍の掘り出だされてむつつりと
山風にさとき楓の嫩葉かな
閑かにて新茶汲まるる音ひびく
耽読の額のあがる新茶かな
初蝉や昼餉にほはす邑の家
熟麦に真白なる蝶ゐて遊ぶ
めにたちて卯つ木の花のましろにぞ
さくらごのをさなきはみなそらざまに
青雲と白雲と耀り麦の秋
冷蔵庫厚き扉の頑なに
肌ぬぎや肩胛もなくふくよかに
肌ぬぎや世帯くづれの小女房
避暑の荘朝餉の卓を青芝に
ナプキンの糊のこはさよ避暑の荘
冷房や汗のけはひもなき少女
くつたびを穿かざる脚の日焼かな
あらくさの茂れるなかへ帰省かな
星の夜の砂のしとねのキャンプかな
としごろの膝をかくさず砂日傘
出で立ちて長脛比売や砂日傘
脱ぎ棄ての羽衣ばかり砂日傘
砂日傘真昼の夢をうち覆ふ
砂日傘彼まどろめり彼女読む