和歌と俳句

日野草城

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のまはりの土のやさしさよ

の掘り出だされてむつつりと

山風にさとき楓の嫩葉かな

閑かにて新茶汲まるる音ひびく

耽読の額のあがる新茶かな

初蝉や昼餉にほはす邑の家

熟麦に真白なる蝶ゐて遊ぶ

めにたちて卯つ木の花のましろにぞ

さくらごのをさなきはみなそらざまに

青雲と白雲と耀り麦の秋

冷蔵庫厚き扉の頑なに

肌ぬぎや肩胛もなくふくよかに

肌ぬぎや世帯くづれの小女房

避暑の荘朝餉の卓を青芝に

ナプキンの糊のこはさよ避暑の荘

冷房や汗のけはひもなき少女

くつたびを穿かざる脚の日焼かな

あらくさの茂れるなかへ帰省かな

星の夜の砂のしとねのキャンプかな

としごろの膝をかくさず砂日傘

出で立ちて長脛比売や砂日傘

脱ぎ棄ての羽衣ばかり砂日傘

砂日傘真昼の夢をうち覆ふ

砂日傘彼まどろめり彼女読む