昼顔に日はただ燬くる高麗野かな
昼顔の咲いて高麗野の油照
納屋裏へ来て夕顔の花盛り
夕顔の花暮れ残る籬かな
夕顔の晩涼謡ひ来るは誰ぞ
あぢさゐの月夜となりぬ外厠
夜振火に浮みいでたり月見草
月よりも夏の灯強し撫子に
常夏や軋りて止る貨物汽車
思ひごと青き林檎にうちあけよ
切望のバナナ二つで足るは寂し
夏蜜柑剥くや明眸しばたたき
しみじみと溶くる砂糖や夏蜜柑
夏蜜柑ぐいとむかれて匂ひけり
夏蜜柑骸となりて匂ひけり
しろがねの水蜜桃や水の中
そぼ濡れて縞鮮かや真桑瓜
竿疵もありて青梅うまさうな
あら塩をつけて青梅喰ひ飽かぬ
くちびるに触れてつぶらやさくらんぼ
苺食む朱唇ミルクに濡れそぼち
初生りの紫紺かしこき茄子かな