和歌と俳句

日野草城

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昼顔に日はただ燬くる高麗野かな

昼顔の咲いて高麗野の油照

納屋裏へ来て夕顔の花盛り

夕顔の花暮れ残る籬かな

夕顔の晩涼謡ひ来るは誰ぞ

あぢさゐの月夜となりぬ外厠

夜振火に浮みいでたり月見草

月よりも夏の灯強し撫子に

常夏や軋りて止る貨物汽車

思ひごと青き林檎にうちあけよ

切望のバナナ二つで足るは寂し

夏蜜柑剥くや明眸しばたたき

しみじみと溶くる砂糖や夏蜜柑

夏蜜柑ぐいとむかれて匂ひけり

夏蜜柑骸となりて匂ひけり

しろがねの水蜜桃や水の中

そぼ濡れて縞鮮かや真桑瓜

竿疵もありて青梅うまさうな

あら塩をつけて青梅喰ひ飽かぬ

くちびるに触れてつぶらやさくらんぼ

食む朱唇ミルクに濡れそぼち

初生りの紫紺かしこき茄子かな