天駆ける一飆ありぬ夏木立
曳き連れてどれも汗馬夏木立
よよ風に日影さざめく夏木かな
大風にはげしく匂ふ新樹かな
星屑や鬱然として夜の新樹
日かげりて風色澄める新樹かな
湧きあがり膨れあがりて新樹かな
雨ながら暁色到る新樹かな
翠緑も夜来の雨の新樹かな
大池の汀の新樹聳えけり
雨意やがて新樹にひそと降りいでし
新緑にいよいよ古き伽藍かな
寂しさや若葉にそそぐ昼の雨
わくらばやぶらぶら病いつまでも
病葉や淫祠なりとて毀たるる
下闇に白くつかへる扇子かな
下闇や目睫に在る煙草の灯
若竹に古竹色を収めけり
古竹參差たりその中の今年竹
朝風や藪の中なる今年竹
ばらりずんと泰山木の花崩る
紫や朝風に散る桐の花
夕栄にこぼるる花やさるすべり
葉先早や燃えて微風の若楓