うすまりし醤油すずしや冷奴
古妻のすこし酔ひけり冷奴
漬茄子の一夜を惜む紫紺かな
糠味噌へ陥る茄子の紺可惜
移り香の衿になほあり胡瓜漬
鮓の香のほのかに寒し昼の閑
ちはやぶる神代の石や鮓の石
清風机詩経一巻鮓一鉢
破れたる真昼の夢や鮓馴るる
鮓の香を慕うて出たる昼蚊かな
とろとろと舌に触れたる新茶かな
割氷にゆがみて透けり鉢の綾
冷えわたる五臓六腑や氷水
削り氷や汗冷えそむる腋の下
日あたりて午後の噴井や氷店
はらわたのひしとつめたし氷水
やや融けてアイスクリーム冷たけれ
談論やコップのビールなほざりに
サイダーや繁に泡立つ薄みどり
冷酒に澄む二三字や猪口の底
冷酒に刀筆の吏の韻事かな
冷酒の利いていよいよ舌足らず
糟糠の妻に冷酒薦めけり