和歌と俳句

日野草城

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老鶯啼いて山行の餘情かな

かはせみや水つきかかるふくらはぎ

蛇を見て寒き心や日のさかり

鳴きやんでまなこ寂しき河鹿かな

青蛙ちまちまとゐる三五匹

いとしさに堪へて見てゐる青蛙

いとしさに見つつし飽かね青蛙

青蛙乗りゐし如露をはづしけり

枝蛙青く跳びけり砂の上

ひらめきし蜥蜴の背や苺畑

瓜番が雷死の葬や青とかげ

蚊を呑んで大やもり眼をしばたたく

朝潮のさやさや青きくらげかな

夕潮にほかりほかりと海月かな

夕凪やまどかに浮ける大海月

沈璧の浮み出でたる海月かな

大き愚かなまなこもちにけり

松明の長き煙やほととぎす

月しろのにはか明りやほととぎす

林檣によろばふ月やほととぎす

風前の灯の穂危うしほととぎす

待ち出づる月は端山やほととぎす

ほがらかに月夜更けたりほととぎす

苑日々に草深うなる鹿の子かな

女しきりに鹿の子愛づる暮色かな

丘越えて親に逢うたる鹿の子かな