和歌と俳句

夏木立

内藤鳴雪
与謝の海や藍より出でて夏木立

城もなし寺もこぼちぬ夏木立 子規

夏木立故郷近くなりにけり 子規

十抱への椎の木もあり夏木立 虚子

ひしひしと黒門の夏木立かな 虚子

夏木立幻住庵はなかりけり 子規

夏木立深うして見ゆる天王寺 碧梧桐

夏木立蔚然として楠多し 虚子

晶子
鎌倉や御仏なれど釈迦牟尼は美男におはす夏木立かな

晶子
頬よすれば香る息はく石の獅子ふたつ栖むなる夏木立かな

時明りする木の肌や夏木立 碧梧桐

我犬のきき耳や何夏木立 虚子

厨丁の折る花のあり夏木立 碧梧桐

夏木立青葉若葉もなくなりぬ 石鼎

天駆ける一飆ありぬ夏木立 草城

曳き連れてどれも汗馬夏木立 草城

そよ風に日影さざめく夏木かな 草城

夏木立灯よりも燃ゆる星を怖づ 橙黄子

撞き終へし鐘に雨降る夏木かな 水巴

太りしと見上げ夏木の幹叩く 素十