和歌と俳句

渡邊水巴

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

ひらり高う嫩葉食みしか乙鳥

三日月に誓ふて交すげんげかな

門掃かれてあるじ出でずよ夕桜

大藪の揺るる夜空や花の雨

山めぐりやめて雨聴くかな

春行くや樋の水走る窓の岩

顔も膝も蔦の羅漢や夏近き

短夜や引汐早き草の月

稲妻をさいて水ゆく土用かな

しづかさや実がちに咲きし桐の花

歩くまもそこらほぐるる若葉かな

宇治に仰ぐ日月白き若葉かな

撞き終へし鐘に雨降る夏木かな

月見草はなればなれに夜明けたり

初秋や通夜の灯うるむ花氷

引く浪の音はかへらず秋の暮

さざ波の絶えざる瀞や秋の暮

どの道も秋の夜白し草の中

火種借りて杉垣づたひ星月夜

草木映りて澪の長さや星月夜

月の光友減り減りて澄み来たり

ものの影みな涅槃なる月夜かな

風の音にくさる菌や秋の霜

うしろから秋風来たり草の中

こほろぎや入る月早き寄席戻り