和歌と俳句

霙 みぞれ

みぞるゝや茶屋に灯りし吊燈籠 みどり女

みぞるるや戸ざすに白き夜の芝 水巴

釜めしもみぞるゝものゝ一つかな 万太郎

霙ふる、売らなきやならない花をならべる 山頭火

霙ふるポストへ投げこんだ無心状 山頭火

霙るるや燈華やかなればなほ 亞浪

青き鴨もはらに鳴ける霙かな 悌二郎

まづ枇杷の葉のさらさらみぞれして 山頭火

けふ一にちはものいふこともなかつたみぞれ 山頭火

夕霙明日の芝居のたのしみに みどり女

しばらくの霙にぬれし林かな 汀女

霙るるや子をかばひゆく軒づたひ 立子

鳩ちかく横にかけりし霙かな 石鼎

たそがれて木深き音の霙かな 石鼎

上海の霙るる波止場後にせり 虚子

霙れゐる苦力みな手をこまねけり 虚子

中庭の霜除すみしみぞれかな 万太郎

とび石のはやばやぬれし霙かな 万太郎

ひとものと松恋ひをれば霙来ぬ 鷹女

筆とらず読まず机に霙きく 占魚

霙ふる裏山かけて竹ばやし 占魚

霙るると告ぐる下足を貰ひ出づ 汀女

霙るるや小蟹の味のこまやかさ たかし

蟹提げて人霙れ来る三国かな たかし

門に積む菜に降り溜まる霙かな たかし

鴎啼き日日の霙に濡るる町 たかし

夜に入れば笹に霙るゝ音ばかり 占魚

夕みぞれいつもは不二のみゆるみち 万太郎

街それて傘のみぞれの重くなる 林火

屋根赤きわが家のみゆるみぞれかな 万太郎

山鳩も噂も遠くみぞれけり 鷹女

みぞれ雪涙にかぎりありにけり 多佳子

夕霙みんな焦土をかへるなり 槐太

夕霙をりから池の端に在り 槐太

みぞるゝやたゞ一めんの日本海 万太郎

夕みぞれ干満珠寺のむかしかな 万太郎

みぞるゝやきのふの悔のにがき酒 万太郎

煮やつこの味は濃きほどみぞれかな 万太郎

燈籠に笠のもどりしみぞれかな 万太郎

大和美しみぞれ耕馬を眼にせずば 多佳子

ガスの穂を手風で立たす霙かな 不死男

海の岩沈み漂ひ霙降る 悌二郎

山城の石佛も亦霙れゐむ 悌二郎


短日 冬の日 顔見世 冬の空 水鳥 初雪 初氷 寒さ 冬木立 枯木 冬枯 枯尾花 冬の山 枯野 みそさざい 都鳥 千鳥 冬の海 河豚 海鼠 冬ごもり 埋火 囲炉裏 焚火 炬燵 暖炉 火鉢 火桶 湯たんぽ 風邪 日向ぼつこ 北風 霜夜 冬の雨 冬の月 冬至 柚湯 クリスマス 師走 年の市 煤払い 年忘れ 餅つき 歳の暮 行く年 大晦日 除夜 除夜の鐘