青き鴨もはらに鳴ける霙かな
柴漬をあげて夕日によろめける
海の鳥むれつゝ舞へり火事の空
鳰二つかづき潜きてへだたりぬ
雪の杉鳶は揺り居りその梢を
あゆみつゝ虫の絶えしをふとおもふ
たのしげの家ぬちあらはに桑枯れぬ
霜除の藁に沁みつゝ雨さみし
鴨も来てきよらに芝の枯れにけり
とほしろく海高まれり枇杷の花
冬ひさし吾が荒園にものを焚く
芒原枯れて光れり人に逢はず
笹鳴のゆふべ鳴かねば土凍てし
雪積めばあをき夕べを窓に倚る
畦の雪けふもまさをに人踏まず
霜見ればおのれいとしみ手を揉める
霜ふかき石蕗とていまを濡れにける
石蕗の日のあたたかければなまけゐる
石蕗咲けり安房のあら浪けふを凪
石蕗をうつ音よろしさ初あられ