和歌と俳句

篠田悌二郎

青き鴨もはらに鳴けるかな

柴漬をあげて夕日によろめける

海の鳥むれつゝ舞へり火事の空

二つかづき潜きてへだたりぬ

雪の杉鳶は揺り居りその梢を

あゆみつゝ虫の絶えしをふとおもふ

たのしげの家ぬちあらはに桑枯れぬ

霜除の藁に沁みつゝ雨さみし

鴨も来てきよらに芝の枯れにけり

とほしろく海高まれり枇杷の花

冬ひさし吾が荒園にものを焚く

芒原枯れて光れり人に逢はず

笹鳴のゆふべ鳴かねば土凍てし

積めばあをき夕べを窓に倚る

畦の雪けふもまさをに人踏まず

見ればおのれいとしみ手を揉める

霜ふかき石蕗とていまを濡れにける

石蕗の日のあたたかければなまけゐる

石蕗咲けり安房のあら浪けふを凪

石蕗をうつ音よろしさ初あられ