蘆垣の枯れしうしろに沼湛ふ
冬田の井噴きあふれては畦ほそる
小夜しぐれ野川の鮠を鉢に飼ふ
しぐれてはおどろきやすし鉢の鮠
鉢の鮠しづもりふかし時雨すぐ
草枯るゝしづけさ聞けり川原ゆき
鵙鳴いて芭蕉忌なりき坂を上る
寒鮒のあを藻ひとすじからみたる
冬の日の子ら汚れたり顔といはず
畦しろく田にはつもらぬ雪積めり
雪晴れて黒山檜山眼には沁む
雪とほく来たるおもひの眼つぶる
雪やまずものかそけきはあを菜畑
麦の芽を詠み敵前の身をわする
寒き貌いくつ行き過ぎ赤城見ゆ
山の肌散りしもみぢに彩られ
枯尾根の馬柵天遠く歪み立つ
生けるもの声だにあらず雪きたる
白樺を焚きゐし燠をわけ呉れぬ
岩角に吹雪さけつゝ眼見あふ
地蔵岳たちまち雪を咲かせたり
黒檜山吹雪て遂にゆきがたし