和歌と俳句

篠田悌二郎

蘆垣の枯れしうしろに沼湛ふ

冬田の井噴きあふれては畦ほそる

小夜しぐれ野川の鮠を鉢に飼ふ

しぐれてはおどろきやすし鉢の鮠

鉢の鮠しづもりふかし時雨すぐ

草枯るゝしづけさ聞けり川原ゆき

鵙鳴いて芭蕉忌なりき坂を上る

寒鮒のあを藻ひとすじからみたる

冬の日の子ら汚れたり顔といはず

畦しろく田にはつもらぬ積めり

雪晴れて黒山檜山眼には沁む

雪とほく来たるおもひの眼つぶる

やまずものかそけきはあを菜畑

麦の芽を詠み敵前の身をわする

寒き貌いくつ行き過ぎ赤城見ゆ

山の肌散りしもみぢに彩られ

枯尾根の馬柵天遠く歪み立つ

生けるもの声だにあらずきたる

白樺を焚きゐし燠をわけ呉れぬ

岩角に吹雪さけつゝ眼見あふ

地蔵岳たちまちを咲かせたり

黒檜山吹雪て遂にゆきがたし