磐梯に雪来し今日の天守閣
山は枯れ川群青に流れたり
霜の桑歩むひびきに葉を落とす
強霜や声なく甘ゆ牛羊
磐梯の雪景も帰路はややに飽く
冬あをき藻の片なびく鱒の影
病む鱒の死力群追ふ冬の雲
冨士をひと目許して厚き冬の雲
竹揺らぐたび彩ふかめ冬紅葉
冬日燦々芝生わづかに出し石に
光れるは海苔干場なる田の氷
ひとつ浮き金魚鰓ふ寒日和
枯れ蓮の折れ臥す骨を氷閉づ
崩壊の音を枯野の遙かより
千鳥鳴くや夜靄ながるる雪の上
鴨らしくだみ声のぼる雪明り
対岸の雪にも千鳥鳴き応ふ
深雪なり営みの灯も次ぎて消え
カーテンの隙にわづかの夜の雪
玻璃戸拭き雪嶺窓に現ぜしむ
冬豊かにも朝日享く湖の前
夜はしぐれしよっつるの味淡かりき
山毛欅落葉たまりて汀浄くせり