和歌と俳句

篠田悌二郎

杖ついて祖母門にあり羽子つく

沖浪のかゞやき照るや羽子日和

水門の扉に吹かれるかな

初日記畢の頁も記し了へよ

信濃には佛ゐませり初まゐり

鳥総松雪追ふ雪の来てうもる

鳥総松凍雪ふかくすきとほり

いみじきは砲車の注連をうたひたる

松籟の不断といへど二日かな

注連かけてふるき具足を飾りたる

松過ぎのそのさみしさとこころづく

風邪ひきの遅き年賀の落ちあふも

岬端にとどむ車内も初日待つ

鵜が低く海わたる見ゆ初明り

岩伝ふ暗さ初空水いろに

冲雲を金縁どるや初日の出

噴煙の雲を初日が揺らぎ出づ

独楽澄みて芯の乱れの見えぬうち

カーテンの隙を真紅に初日出づ

待つありて海の浮木に初日さす

富士の玲瓏巨き創あをし

元日の黒き廊下の凍を踏む

初御空雪嶽谷川やゝ傾ぐ

初日負ふ東方の山軽んずる

二日も晴れ奥に白嶽一つ殖ゆ